2021/11/29

DRI(Disability Rights International )2021キャンペーン

 

Disability Rights International2021年、子ども権利委員会の2021一般討議日を障害分野から啓発するため、かぞくと暮らすことの権利を守るキャンペーンを行った。キャンペーンのページには次のように書かれている。

少なくても世界中で約1千万の子どもが、かぞくの愛と養育を受けず施設で育っています。公的資金やキャリティで年間100億ドルのお金が孤児院、施設介護、グループホームに流れています。DRI の複数の報告書ではこれらの子どもの虐待、ネグレクト、人身売買の詳細を記録してきました。すべの子どもが、孤児院やグループホームではなく、かぞくと一緒に暮らし育つ権利があり、その機会を持たなければなりません。

本キャンペーンでは、署名運動(世界200筆以上)や、以下のウェビナーを開催した。

・障害のある子どものためのグループホーム?障害者権利の観点から(2021年9月7日)
(Group homes for children with disabilities? Disability rights perspectives. Symposium)

・かぞく生活を送る権利を守りすべの子どもの施設収容を防ぐ。課題と解決(2021年9月8日)
(A Call to Action to protect the right to family life and prevent institutionalization for all children. Challenges and solutions)


上記2つの動画はこちらから 

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・世界的な論争:国際人権の実施。小規模グループホームの孤児院に取って代わるもの
(A Global Controversy: International Human Rights Implications of Replacing Orphanages with Small Group Homes)

動画はこちらから

2021/11/27

国連 子どもの権利委員会 2021一般討議日 ー障害児と脱施設化ー

   国連の子どもの権利委員会は、2021916日~17日にかけて「2021一般討議日:子どもの権利と代替的養護」を対面とオンラインで開いた。世界各国から1200名参加した。今年の一般討議日(およそ2年に1回行われている)は、以下の12の目標が設定されていた(Committee on the Rights of the Child , Children’s Rights and Alternative Care Background Document”2021, p3)。

·        ・代替的養護(養子、里子、施設で育つ)を経験した子どもや若者のための有意義な参加を創る

·        ・代替的養護に措置された大人から学ぶ

·        ・親の養育のない子どもに関する国連総会決議(2019)(the 2019 UN General Assembly (UNGA) Resolution on children without parental care)を検証する

·     ・自由を奪われた子どもに関する国際研究(the Global Study on Children Deprived of Liberty)を足がかりにする

·        ・代替的養護における害や虐待を確認し、司法と説明責任につなげる方法を探る

·        ・代替的養護における新型コロナウイルス感染症の影響から学ぶ

·        ・家族の分離を防ぐ

·       ・ 特化した支援や何をもって質の高い代替ケアとするのかについて、経験から学ぶ

·       ・子ども保護の仕組みを強化する取り組みを探る

·        ・正確な調査を促進する

·        ・複雑な状態への刷新的なアプローチを探る

 このイベントでは、障害児を、分離と施設収容にあうリスクの高い子どもと捉えているのが印象的だった。障害者の脱施設化を進めていくにあたり重要なため、紹介する。(以下は、同,pp, 41-42から要約)

2.10.1 障害のある子ども

 障害のある子ども(身体と知的障害の両方)は家族から分離させられたり施設収容にあうリスクがほかの子どもよりも高い。提出資料(一般討議日のために委員会が募集した手紙・絵・ビデオ・意見書)には、これに対して次のような多数の理由が述べられた。

·        子ども一人ひとりにあった地域支援と在宅支援が不足している

·        社会によって作られたスティグマ、差別、否定的な慣習的態度、その他の障壁がある

·        貧困や、障害関連費用をまかなうための家族への経済的支援の不足している

·        施設収容、入院、治療を強制する差別的法律がある

·        サービス利用における法的・行政的な壁(対象、基準)がある

·        意思決定から子どもや親を排除する、医学モデルのアプローチや精神能力検査の使用

 施設に暮らす障害のある子どもは良くない状態、ネグレクト、暴力、虐待に遭うかもしれない。提出資料には、施設やグループホーム、里親のもとで、障害のある子どもが否定的に扱われている様々な現状が述べられている。

例えば、年齢、性別、興味、家庭的な環境といった個人状態を無視したところに措置された子どもたちだ。資料の提出者たちは、代替的養護における障害のある子どもに影響する様々なかたちの虐待を指摘する。身体的・心理学的・感情的な虐待、ネグレクト、不確定な期間で施設に閉じ込めること、辛辣な罰、女児・男児の性的虐待、性と生殖的な健康・権利の侵害。そしてこれらに関して司法につながることへの否定。

辛辣な差別、虐待、権利の否定は、交差する傷つきやすさのある障害のある子ども(女児、先住民、難民・移民、性自認ができていない子どもなど)においてさらに悪化しやすい。

  股、家族から分離されていない障害のある子どもも、公平に本人にあった必要な支援やサービスを利用できていなく、将来に分離させられるリスクに置かれている。とくに地方や人里離れたところに住む子どもや、原住民家族・特殊化されたサービスのコミュニティからの子どもは支援やサービスを往々にして、より利用できない。

障害のある子どものためのリハビリテーションと他のサービス(支援機器など)は使用料が高く、家族ケアの重荷になっている。家族は子どもにとって不十分で、連携されていないサービスの組み合わせを使うことに息切れしてしまい、入所施設を手段として頼ってしまう。

 提出資料では、①障害のある子どもは差別やサービスの不足のために家族からの分離の危険が高いこと、②障害のある子どもの分離を防ぐことが重要なテーマに挙がっていた。分離を防ぐことは、以下のような方策である。

·        子ども一人ひとりのニードにあったサービスと支援の提供(在宅サービス、

·        インクルーシブ教育、早期発見、家族支援、パーソナルアシスタントなど)

·        危機のときや乳幼児期の介入と診断情報の提供

·        障害のある子どもの平等な機会を提供するためのインクルーシブな政策

·        障害のある子どもの支援について親や家族が学ぶための研修、情報、支援、指針の提供

·        社会規範を変えるキャンペーン

·        周辺化された傷つきやすいコミュニティでの支援と援助

·        障害のある子どもと親/家族の参加とエンパワーメント

·        統計データと情報が利用できること(養育権の状態など)

 

 提出資料で挙げられたほかの重要な問題は大人が、障害のある子どもについての彼らの選択を聴く、彼らの意見を尊重するのに失敗していることである。これは、薬物治療の強制や暴力といった幅広い危害につながる。提出資料では、障害のある子どもは自分の考えを表すことができ、自分のケアについて満足のいくわかりやすい情報を受けとることが重要だとする。この支援が往々にして提供されていないため、障害のある子どもは往々にして、保護者、サービス提供者、すべての社会によって見えない気づかれない存在である。

 提出資料では、障害のある子どもについての適切な信頼できる比較可能なデータはないことが多く、それが彼らのニードにあったインクルーシブな計画やサービスを届けるのをより難しくしていると指摘した。

国連、障害者の脱施設化ガイドライン概略版を公表

  「私たちは強力な武器を得た」。私はこれを読んで、こう思った。

 202111月、国連の障害者権利委員会から「自立した生活と地域で暮らすこと:障害者の脱施設化ガイドライン(緊急時を含む)」の概略版が出された。概略版であるため、今後加筆・修正されるだろう。しかし公表は、ガイドラインがこのような内容で書かれることを世界に示すものと言って良い。概略版は、私たちが長年訴えてきた脱施設化を、どのような状況においても“緊急時においてさえも”進める方策を示してくれるものである。 

 地域生活を進めていく立場から、注目点を書いてみる(正確な日本語訳は、DPI日本会議の浜島訳を参照してください) 。

●入所施設とは

 概略版では、入所施設を「障害者が生活様式を決められず、自主的に自分の日常生活をコントロールできないところ」としている(セクションーAⅡ)。そして、それは大きさや提供されるサービスの種類に関係ないと明言してる。つまり、リハビリ施設、グループホーム、保護施設、介護施設などに加え、地域生活をしてても上記の状態になればそれは施設と解される

 また概略版では、運営も公立や民間、慈悲団体、宗教団体問わないとしている。日本では現在、地域移行の有効な施策としてとしてグループホームが推奨されているが、概略版では次のように述べられている。

 「障害者の日常の流れや選択を第3者が永続的に管理するものである、大施設からグループホームへの移行は脱施設化とはみなさない」(AⅡ6d

●施設化の原因

 概略版では「入所施設は、障害者の保護や障害者の“解決策”でも適切な支援・サービスの形でもない」と言い切っている(A―Ⅲ2

 施設化の原因として、地域サービスや子どもの代替的養護(親が養育不能にな場合の支援)の不足も挙げ、条約の締約国は「根底にあり根元にある原因を取り除き対応しなければならない」とする。また入所施設を推奨する文化、その文化を醸成してしまう偏見やステレオタイプを無くするよう求めている。(A―Ⅳ1

●脱施設化を進めていくためには

脱施設化プロセスは、全ての障害者が対象であり、本人の意思決定は保障されなければならないとする(セクションBーⅠ.1)。

脱施設化のためには、次のような点を行うことが重要だとする。

·        投資先の変更

全ての障害者にとって利用可能で適切な地域一般サービスを保障すること。グループホーム等ではなく一般住宅施策に投資(BーⅡ10.110.3)。

·        インクルーシブ教育

地域のインクルーシブも質の高い教育も脱施設化にとって重要な要素。具体的には、「特殊教育を質の高いインクルーシブ教育に変換し、特殊教育・特殊学校・寄宿舎学校・その他の分離教育を廃止するのを加速する」こと(同10.4)。

·        脱施設化のための政策

包括的な戦略と行動、合理的な工程、ベンチマーク、人的・技術的・財源的な資源を明記した、よく練られた構造的な脱施設化プロセスを求めている。戦略や行動計画では以下のことを言及するべきであるきとする(B―Ⅲ12)。

o   障害者の自律、思い、嗜好、真の選択の完全なる尊重を保障

o   個別化された支援を保障

o   入所施設から地域で自立した生活に移る期間の支援を保障

o   脱施設プロセスは優先され迅速に行うこと

o   持続可能な資源分配(入所施設から地域生活の支援など)

o   適切な統治(担当機関の設立や、省庁間の連携、障害当事者の参画、政策作成中の施設関係者の排除、中央と地方の間の一貫性のある脱施設化の実施)

  この概略版では、そのほかにも重要な指摘が詰まっている。202112月にガイドライン草案が出される予定である。ガイドラインが障害者運動の北斗七星になるか、注意深く見ていこう。