2023/02/07

脱施設化ガイドライン わかりやすいバージョン

 国連の脱施設化ガイドラインを分りやすくしてみました。
今後はもっと読みやすくする予定です。地域生活するときの説得資料等に使っていただければ幸いです。

参照元:Guidelines on deinstitutionalization, including in emergencies(原文日本語訳(JD仮訳)))

 

緊急事態対応を含む脱施設化ガイドライン

わかりやすいバージョン(ver. 1. 0

I.目的と手続き

段落1

このガイドラインは、障害のある人が自立して生活し、地域社会に含まれる権利を実現すること、障害のある人が入所施設に入ることを防ぐために役立ちます。

 

段落2

このガイドラインは、コロナ前やコロナ禍で入所施設にいる障害のある人の経験(生活の有害な影響、暴力、ネグレクト、虐待、不当な治療、拷問など)を元にしています

 

段落3

障害者権利委員会では、世界中500人以上の障害当事者、市民団体から聞き取り調査をしました

 

Ⅱ.国の、障害のある人を入所施設に入れること(施設収容)を終わらせる義務

段落4

世界中で障害のある人は危険な状況で入所施設に入所させられています。コロナはこの事実を改めて浮き彫りしました。

 

段落5

障害のある人を入所施設に入れることは、障害者権利条約に合っていませんが、世界各国で長く続いてしまっています

 

段落6

障害のある人を入所施設にいれることは、障害者権利条約の数々の条文に違反しています。(第5条、12条、14条、15条、16条。17条、19条、25条など)

 

段落7

施設入所は、障害のある人が自立して生活し、地域に含まれる権利と違います

 

段落8

国は、障害のある人を入所施設にいれること(施設収容)を終わらせ、施設への投資を控えるべきです。施設収容は「保護」や「選択」ではありません。それは緊急事態でも同じ。

 

段落9

施設収容に正当な理由はありません。財源、法律がないこと、スティグマがあることは理由になりません。

 

段落10

個人的な危機(障害の悪化、家族の体調不良、介助者不足など)を抱えるからと言って、施設収容の対象になってはなりません。

 

段落11

脱施設化で目指すのは、障害のある人のあらゆる形態の施設収容、隔離、分離を終わらせることです。

 

段落12

障害のある子どもを入所施設に入れるのは、保護ではありません。分離の一形態であり、有害で、条約に違反します。

 

段落13

国は障害のある人に入所施設から退所する機会を提供しなければなりません。国は新規入所、新規改築をやめてください

 

Ⅲ. 脱施設化のキーポイント

A.施設収容

段落14

入所施設には次のような特徴があります(以下は障害のある人が嫌だと思ったときに問題になります)。

・障害のある人の意に反して、ひとりの介助者が複数人の介助をする

・地域での自立した生活から隔離され、分離されている 

・自分に関わることを勝手に決められる

・誰と暮らすかについて選択肢がない

・スケジュールが決められている

・上から目線のサービス

・生活を監督されている

・障害のある人が集まっている

 

段落15

障害のある人の施設収容は、、障害という理由のみ、または「介護」や「治療」といった理由と組み合わせて、様々なところで行われている

 

段落16

「地域~」という施設もあります。それらはすべて脱施設化をする必要があります。

 

段落17

障害者権利条約の第19条は、入所施設以外の障害のある人の支援について述べています。施設の規模、目的、特徴、入所の期間にかかわらず、施設は条約の趣旨と合いません。

 

段落18 

刑務所など、障害者福祉施設以外の施設にも、障害のある人が多くいる可能性があります。国はそこでの差別も断ち切らなければなりません

 

B.脱施設化プロセス

段落19

脱施設化の重要な点は、障害のある人が、どのように、どこで、誰と暮らすかについて決めることができることです。これにはいろんな努力を組合わせることが必要です

 

段落20

脱施設化は、障害のある人(入所施設に入った経験がある人など)主体で進めなければなりません。次の行動は条約第19条に反します。 

施設の改修、ベッドの増設、大きな施設から小さな施設に移行すること、施設の維持、人権侵害(身体的な制限など)を良しとする法律を作り維持すること

 

C.障害のある人の選択する権利、意思、希望を尊重する

段落21

自立した生活と地域で暮らすことのためには、障害のある人の完全な法的能力、住宅へのアクセス、自分の人生を再びコントロールできることを尊重する必要があります。

 

D.地域に密着した支援

段落22

国は遅れることのなく、質の高い個別支援と、地域のインクルーシブなメインストリームサービスを作りましょう。

 

段落23

自立した生活と地域で暮らすことの重要な要素は、障害のある人が、自らの選択に基づき、日常生活を営み、社会に参加するために必要と思われる支援を受けることです。

 

段落24

障害のある人が、どのような地域サービスを使い、調整し、終了するかを決められるようにする必要があります。その際の支援は公的なものと民間のものがあります。

 

段落25

自立した生活を送るための支援サービスは、障害のある人にとって使いやすいものであることが重要です。

 


 

段落26

地域に密着したサービスには、いろんなものがあります。また、障害のある人が、メインストリーム(障害のないの人が使う)教育、雇用、司法制度、医療などを利用できるようにする必要があります。

 

段落27

パーソナルアシスタンスサービスは、その人のニーズに基づいて個別に、すべての障害のある人に提供する必要があります。入所施設に入れられている人は、施設を出る際すぐにサービスに利用できるように、施設を出る前にパーソナルアシスタンスの仕組みに繋がっておくべきです。

 

段落28

地域に密着したサービスは、分離した施設とつながるサービスが作られるのを防がなければなりません  

 

E.資金と資源の割り当て

段落29

将来の施設を作ったり、維持したりするのにお金を集めるのは(改築を含む)は禁止されなければなりません。投資は自立した生活の支援に向けてください。

 

段落30

国は、入所施設の建設や改修に公的なお金を使うことはやめましょう。お金は地域支援とメインストリームサービスのために使ってください。

 

段落31

国は、入所施設を退所する障害のある人に対し、地域での生活をはじめるときに必要なもの(日常生活用品、現金、食料引換券、利用可能なサービスに関する情報など)を、退所後すぐに提供する必要があります。

 

F.アクセシブルな住宅

段落32

国は、入所施設を退所する障害のある人のために公共住宅を確保したり、家賃補助をする必要があります。但し、退所者を特定の所に住まわせることは障害者権利条約に合っていない

 

段落33

障害者権利条約の第19条に書かれている「居住サービス」は入所施設を意味していません。


 

 

G.障害のある人が参加する脱施設化

段落34

脱施設化を進めていく過程では、入所施設を退所しようとしている人、施設を出た障害のある人の意見を優先させる必要があります。施設を運営に関わる人が、脱施設化に影響を与えることを防がなければなりません。

 

段落35

施設にいる人、施設から退所した人、施設に入る可能性がある人には支援と情報が必要です。

 

段落36 

国が脱施設化を計画する際は、障害者権利条約第19条、障害のある人を入所施設にいれて社会からの排除することの悪影響、脱施設化の必要性について国民に理解してもらえるようにしなさい。

 

Ⅳ.障害のある人と多様性を大切にした脱施設化

段落37

すべての障害のある人には地域で生活する権利があります。一部の人に対して、自立して生活できない、施設に留まるべき、と決めつけることは差別です。

 

段落38 

家族に手伝ってもらうことは全く問題ではありません。但し、これははっきりとした本人の同意によるもので、国はその家族に対して十分に支援をする必要があります。

 

A. 交差性

段落39

入所施設に住んでいたり、入所施設から退所するのある人の差別、隔離、分離、その他の形態の虐待に取組むためには、その人の人種、性別・ジェンダー、年齢、機能障害、入所経験などを考えていく必要があります。

 

段落40

差別は障害のみの理由で起るのではなく、その人の特徴や支援サービスの不足の組合わせで起ります。その差別が施設収容につながります。

 

段落41

脱施設化を進める際は、交差性を考える必要があります。

 

 

B.障害のある女性

段落42

国は、性別やジェンダーに関する次のことを考えて脱施設化の計画を考えてください

·       障害のある女性は、他の女性と比較して、暴力、搾取、虐待のリスクが高い

·       入所中に強制避妊、強制中絶、不妊手術などに遭うリスクがある

 

C. 障害のある子どもと若者

段落43

障害のある子どもにとって、脱施設化は、家族と一緒に生活していくことです。グループホームは、子どもにとって特に危険です。入所を進める国際基準は、条約に反してます。

 

段落44

障害のある子どもは家族と一緒に生活する権利を持っています。「家族」には既婚・未婚の親、片親、同性同士の親、養子縁組家族、親族、きょうだい、拡大家族、代理家族または里親が含まれます。孤児院、入所施設、グループホーム、子ども村などには寄付しないでください。

 

段落45

施設を入ると余計、機能障害が悪くなる可能性が高いです。障害のある子どもと家族への支援は早い時期から、メインストリームで行う必要があります。

 

段落46 

子どもは短い間家族から離れただけで、大きな苦しみやトラウマ、感情的・身体的な機能障害を引き起こます。子どもを施設に入れないことが大事です、 

 

 

段落47

条約234項は、子どもに障害、親に障害があっても、親子分離を禁止しています。国は、子どもの施設入所を防ぐための支援と合理的配慮をしなさい

 

段落48 

障害のある子どもは、すべての子どもと同様に、自分に関することについて意見を聞かれ、その意見が大切にされます。

 

段落49

子どもが施設入所を選ぶはずはありません。障害のある若者にはどこで誰と暮らすかを選択する機会を与えてください。

 

段落50

障害のある子どもと若者に対し、パーソナル・アシスタントやピアサポートを含む地域支援サービスを創る必要があります。国は、障害のある子どもを普通学校(mainstream schools)に入れ、施設に入れる圧力の増大につながる分離教育から防ぐことが大事です。

 

段落51

子どもを施設に入れないために、家族と子どもが必要な情報を得やすいようにしなければなりません。支援者への研修には障害の人権モデルの視点が大切です。

 

D. 障害のある高齢者

段落52

脱施設化の取り組みは、認知症がある人など障害のある高齢者も対象としなければなりません。地域の支援とサービスで年齢による差別は起こしてはならない。

 

Ⅴ.法的に脱施設化できるようにする

段落53

国は、障害のある人が自立して生活し地域に含まれることを妨げる、法例を廃止し、実践を修正・廃止すべきです。法令は、障害のある人の完全なインクルージョンを可能にし、施設の閉鎖に向けた脱施設化を実現するものでなければなりません。

 

段落54

脱施設化の法令は、パーソナル・アシスタンスを受ける権利など自立して生活し、地域に含まれる権利を法的に認めるものでなければなりません。

 

段落55

障害のある人の法的能力を認める法令の改正は、脱施設化と同時に直ちに実施されることが重要です。障害のある人(入所施設に入っている人を含む)が、後見人、強制的な精神医療処置の対象である場合、すぐに解除されるべきです。

 

段落56 

脱施設化について、障害のある人が国・施設側に対し法的に訴え出ることは必要です。とくに施設で性暴力を受けている女性にとって重要です。国は、障害のある人が司法につながりやすくするべきです。

 

段落57

施設にいて自ら苦情を申し立てることができない場合、国内人権機関および擁護団体が訴え出ることができます。

 

段落58

障害を理由に自由を制限する法令は廃止すべきです。例えば、子どもを含む精神科入院に関する規定です。

 

段落59

国は、障害による施設収容が、「差別」であると認めるべきです。

 

段落60

国は脱施設化にためになる、法令、政策、予算、支援サービス、人材を、整備する必要があります。

 

段落61

法令を見直すときのポイントは3つです

 

段落62

法律は障害者権利条約に合うようにしてください

 

段落63

いまある入所施設のお金やその施設が果たしている役割について把握し、どのように地域に移すかを考える必要があります。

 

段落64

いまある地域サービスについて把握する必要があり、障害のある人にとって利用しやすくすることが大事です。

 

段落65

地域サービスをはじめるときのポイント(障害のある人と協議しながら)

 

段落66

国は脱施設化を進める際、施設で働く人のことを考える必要があります。彼らをどのように条約に合うサービスに転職させることができるかと言うことです。

 

段落67

脱施設化の計画は、きちんと行程やスケジュールがあり、十分な予算をもって進める必要があります。

 

段落68

脱施設化の戦略と行動計画は、障害のある人(とくに施設経験のある人)と協議し作成された宣言・声明を元にしたものにしてください

 

Ⅵ.インクルーシブな地域支援サービス、システム、ネットワーク

A.支援システムとネットワーク

段落69

支援システムとネットワークとは、障害のある人の意志決定を大切にした生活を支える家族、友人、隣人、あるいは信頼できる人々とともに作り上げるものです。障害のある人が自立して生活し、地域に参加する権利を行使するために必要です。

 

段落70

国は、障害のある人が地域で暮らすサポートをする当事者グループや団体(ピアサポートや自立生活センターなど)に支援をしてください。

 

段落71

国は、制度以外の支援も認め、地域や家族が必要に応じて研修と支援を受けるようにすべきです。

 

段落72

 支援者、支援サークル、支援ネットワークは、障害のある人本人によってのみ選択される必要があります。第三者によって選択されるものではありません。

 

段落73

ピアサポートは、施設や医療専門職から独立し、障害のある人によって自律的に組織されなければなりません。

 

段落74

障害のある人が家族から支援を受けることを決めた場合、家族への適切な支援サービスが提供される必要があります。このようなサービスは、たとえ短期間であっても、障害のある子どもや大人を施設に入れることを意味しません。

 

B.支援サービス

段落75

支援サービスは、障害のある人の意思と希望を尊重する人権モデルでやりましょう。医学的基準だけを使ったり、または医学的基準に頼らないこと。医療専門職は決定権を持ちません。

 

段落76

国は、医療システム以外(精神保健の診断または治療を必要としない)のサービス選択肢を用意すべきです。

 

段落77

リハビリテーションなどの支援サービスは分離させてはならず、障害のある人の隔離や孤立を強くするものであってはいけない。

 

段落78

支援サービスの財源はゆとりがあるべきで、お金が無いから支援できないことはあり得ません。いろんな障害のある人の要求と希望に応えるため、新しい形態の支援を創りましょう。

 

段落79

国は、障害のある人が施設から出て実家に戻る選択をしても、一人暮らしをする権利は保証しなければなりません。

 

段落80

支援は、利用する障害のある人が主体になるべきです。いやいや受入れたり、障害のある人の自律性、自由またはプライバシーを侵害する方法で提供されたりしてはなりません。

 

段落81

高齢の障害のある人に対する支援は、その人が地域のなかで自分の家でずっと暮らせる機会を提供すべきです。

 

段落82

障害のある子どもには、特有のサービスが必要です。しかしそれは、子どもの分離、排除、または放置をするものになってはいけません。

 

C.個別支援サービス

段落83

国は、すべての障害のある人(とくに施設を退所する人)が、必要に応じてパーソナル・アシスタンスを確実に利用できるようにすべきです。彼らにはパーソナルアシスタンスに関する情報を与えてください。

 

段落84 

国は、いろんな種類の個別的で人間中心の支援サービスを提供すべきです。

 

D.支援機器

段落85

国は、ハイテクやローテクの必要な支援機器を提供すべきです。

 

E.所得支援

段落86

国は障害のある人に対して、基本的な所得保障と、医療および障害関連費用(施設収容による被害を修復するために必要なものなど)をカバーする支援を提供すべきです。その支援はその人のライスステージに応じて変えていく必要があります。

 

段落87

国は世帯や職業に関係なく、すべての障害のある人が自立して生活するための費用をカバーする支援を受けることを保証すべきです。

 

段落88

施設の外でどこで誰と暮らすか、どのサービスを受けるかについて決められるように、障害のある人がニーズに合った支援形態、合理的配慮、様々な選択肢をもつことが必要です。

 

段落89

障害のある人とその家族の貧困は、施設収容の主な理由の一つ。国は、障害のある人が適切なふつうの生活を送れるように十分な所得支援を提供すべきです。

 

Ⅶ.他の人と同じようにメインストリームサービスに使う

段落90

脱施設化を計画するときは、メインストリームサービスを障害のある人にとって使いやすくしましょう。国は、メインストリームサービスで障害による差別が起きないようにすべきです。

 

段落91

国は、合理的配慮やメインストリームサービスで、障害のある人を入所施設に入るのを防ぐべきです。

 

段落92

地域に住むために施設サービスを使うことは禁止します。合理的配慮やメインストリームサービスを使ってください。

 

A.施設を退所する準備

段落93

すべての人は、入所施設から出て行く平等な機会をもち、いつでも退所できます。いかなる人も脱施設化から取り残されなりません。

 

段落94 

国は、施設の職員に、人権に基づいた、回復を目指した、本人中心的な脱施設化のアプローチに関する研修を受けさせてください。

 

段落95

入所施設から出て行く人の支援6点。

 

段落96

国は、入所施設から出て行く人に、地域に暮らすために必要な文書(住民票や障害者手帳など)を出してください。

 

段落97

金融、保険機関は障害を理由に利用をことわってはいけません。

 

段落98

施設の職員や法律関係者は、障害のある人が地域で生活する権利や障害のある人に合ったコミュニケーションに関する研修を受けなくてはなりません。入所施設が地域サービスを行ってはいけません。

 

B.地域で自立して生活する

段落99

入所施設から出て行く人には、他の人と同じ権利を保障しなければなりません。

 

段落100 

国は、障害のある人のインクルージョンに関する啓発活動を支援してください.その地域の啓発活動には、施設に住んでいる人や施設から出た人の参加が重要です。

 

段落101

国は、施設を退所した人が交通機関を利用できるようにすべきです。

段落102

国は地域のバリアフリーにすること

 

段落103

国は入所施設から出て行く人に総合的な医療を提供する必要があります。その際、障害の医学モデルの観点ではなくその人の選択、意思、希望を尊重した観点から提供してください。

 

段落104

国は入所施設から出て行く人に対して、他の人と同じように仕事をする機会を提供する必要があります。保護された雇用または分離された雇用を禁止しなければなりません。

 

段落105

入所施設から出て行く人は、ホームレスや貧困に陥る場合があるので、十分な支援が必要です。支援を受けているという理由で社会的制限を受けることはあり得ません。

 

段落106

入所施設から出て行く人はインクルーシブ教育へのアクセスを差別なく持てるようにするべきです。

 

Ⅷ.戦争や災害のときの脱施設化

段落107

パンデミック、自然災害、紛争などの緊急事態の間も、締約国は入所施設を閉鎖するための努力を続け、むしろ早める必要があります。とくに、気候変動が障害のある人、特に施設にいる人たちに大きな影響を及ぼすことを注意。緊急的なお金や復興のための金は、施設収容を継続させるために使われてはなりません。

 

段落108

緊急事態の時でも、脱施設化の計画は進めてください。「あなたは障害があらここにしなさい」とか、法的能力の制限は、緊急時でもやめましょう。

 

段落109

緊急事態の時、脱施設化をどう継続し加速させていくかについての計画は、障害のある人(とくに入所経験がある人)と創りましょう。緊急対応、救援、復興のプログラムや政策の策定、実施、モニタリング、評価のときも、一緒にしましょう。

 

段落110

緊急事態の時は、脱施設化のなかで最も困難なことを優先させましょう。

 

段落111

緊急事態の時は、障害のある女性は、とくに 性別ジェンダーに基づく暴力のリスクが障害のない女性に比べ高く、リハビリテーションセンターや法的救済につながりにくい。性別やジェンダーのことを考えて支援しましょう。

 

 

段落112

緊急事態に備えて、対応計画や復興計画、それへのお金の割り当て、実行には条約の原則に沿って行ってください。

 

段落113

国は、緊急事態の後、施設が再び建てされ、障害のある人を再び入所させたりしないようにしてください。

 

段落114

緊急事態のために、ハザードマップを創ったり、常に障害のある人の情報を集めておくことが必要です。

 

Ⅸ.障害のある人を入所施設に入れさせた国の責任

段落115

障害のある人を入所施設に入れることは、障害のある人がもっている色んな権利を侵害すること(人権の多重侵害)だと、国が自覚することが重要です。

 

段落116

国は、条約と色んな国際的指針に沿って、障害のある人を入所施設に入れた責任をとってください。

 

段落117

国は、施設収容によって引き起こされる被害の実態を調査したり、法令を変えたりする仕組みを創るべきです。また、入所施設にいた人が、法的に救済を求めることができるようにすべきです。

 

段落118

「被害」とは、入所中・退所した後に遭った権利侵害と個人の生活への影響、障害と性別・ジェンダー・人種などが合わさった被害を含みます。それらの被害に対応できる仕組みが必要です。

 

段落119

国は、施設入所を経験した障害のある人を代表するすべてのグループと協議して、入所施設から出た人に正式に謝罪する必要があります。

 

段落120

賠償の方法は、いろいろあります。

 

段落121

国は、施設収容の施策や、入所施設に入れられた人の被害の全容を調査し、国民に分るようにゆっくり丁寧に検討すべきです。

 

段落122

脱施設者のためのすべての救済措置は、障害のある人、とくに入所施設に入れられた人と進めなければなりません。

 

段落123

施設入所に対する保障・賠償をするからと言って、被害を調査し訴追する義務は軽減されません。

 

Ⅹ.脱施設化に関係するデータ

段落124

国は統計・調査・行政データを集め、これらを脱施設化に利用しなければなりません。これは、脱施設化の進捗状況を把握するのに必要です。

 

段落125

どのようなデータを集めるか、言葉の定義、集めたい項目の決定は、障害のある人とやりなさい。

 

段落126

集めるデータは例えば、以下。

人種、出身民族、年齢、ジェンダー、性別、性的指向、社会経済的地位、機能障害の種類、施設収容の理由、入所日、退所予定日または実際の退所日。そして。精神科や精神保健施設にいる人の数と動向、退所義務が果たされたかどうか、何人が退所の選択肢を行使したかなどの状況、まだ施設を出ていない人のための計画に関するその他の情報など

 

段落127

国は脱施設化に関する収集データを広く公開してください。

 

段落128

データ保護の法律は、条約の趣旨と合わせなさい。何故ならば、データを集める際、障害のある人の法的能力を尊重せず、人権の監視および擁護を弱める場合があるからです。

 

XI.脱施設化プロセスの監視

段落129

脱施設化を監視するのは重要です。プロセスは誰からでも分りやすくしましょう。監視機関は国から独立し、国の脱施設化の計画に意見を言うことができます。

 

段落130

監視機関には、障害のある人、特に施設にいる人または入所施設を経験した人、その代表団体も参加しましょう。施設の職員は入ってはダメです。

 

段落131 

監視機関は、十分なお金と権限をもち、施設、文書および情報を制限なく見ることができる必要があります。

 

段落132

脱施設化を監視する団体は、、公営・民間の施設内の状況や人権侵害を自由に調査することを許可されるべきです。この調査は障害のある人ののプライバシーを尊重するものでなければなりません。

 

段落133

国は、監視団体からの情報などから分った人権侵害をいつでも対処すべきです。

 

段落134

施設に入所していた人から「自分の情報がほしい」という申し出た場合、国はその要求を尊重すべきです。

 

段落135

施設から出る際、障害のある人の記録は、本人の意思と希望に応じて、本人に引き渡されるか、抹消されるべきです。

 

段落136

国は、緊急事態の時でも、安全性を確保しつつ、監視を続けることを許可すべきです。

 

段落137

監視は、すべての施設が閉鎖されるまで行われるべきです。その活動には、障害のある人、特に施設に入れられた人、その代表団体、および独立した市民団体も参加できなければなりません。

 

XII.国際協力

段落138

脱施設化を支援するためには、国際協力が重要です。但し、施設へのお金は障害者権利条約の趣旨に合っていないためやめてください。

 

段落139

どのような国際協力が行われているかを広く伝えることは、施設の要望を無くすために必要です。

 

段落140

国際協力のお金でやる開発プロジェクトの計画と実施は、障害のある人(とくに施設にいる人、施設に入れられた人)とその団体と協議してください。

 

段落141

国際協力は、ずっとは行うことができないため、国にとって、脱施設化を自国にとって持続可能なものにならなければなりません。

 

段落142

地域の団体は、国際協力の一環として、脱施設化をすすめるのに重要な役割を果たすことができます。

 

段落143

各国の脱施設化を支援する国際的な調整は、悪い実践(障害の医学モデルの手法や強制的な精神保健法を推進するなど)が繰り返されることを防ぎ、優れた実践を集めるために重要です。この調整を行う場所を創るべきです。



                  *  Adopted by the Committee at its twenty-seventh session (15 August–9 September 2022)

                      委員会         27回会期(2022815日~99日)にて採択

2022/11/29

国連「脱施設化ガイドライン」日本語訳

 
今年10月に国連の障害者権利委員会から出された「脱施設化ガイドライン」の日本語訳が出ました。

 このガイドラインは、障害者が施設生活より、それぞれ地域で自立した生活を送ることを強く言っており、締約国にはその整備を求めています。具体的は
 
 ・施設の特徴。
 
 ・施設はグループホームなどの様々な呼称があるが、それらはすべてが、脱施設化の対象であること。
 
 ・パーソナル・アシスタンス、日本で言うと、対象の制限撤廃にした、重度訪問介護などの地域支援の作り方。
 
 ・子どもの施設収容は危険であり、子どもを施設に入れる圧力の増大につながる分離教育への措置を防ぐべき。
 
 ・パーソナルアシスタンスは高齢者も使えるようにすること。
 
 ・いまも施設にいる障害者や施設経験者を丁寧に支援しながら施設から出て行ってもらうこと
 ・地域で暮らすための支援。
 
 ・施設収容に対する国の責任と賠償のあり方
 
 などについてしっかりと書かれています。なかでも、施設にいる障害者や、施設収容の経験者にどのように、尊厳を守りながら、地域で暮らしてもらえるかについて、丁寧に書かれているところが印象的です。
これは、脱施設化を求める私たち運動家の北斗星になると考えます。
ご一読ください。

★脱施設化ガイドラインとその原案への世界の意見≪JD仮訳その④≫に、
『緊急時を含む脱施設化に関するガイドライン』を追加しました。

URLはこちらです
https://jdnet.gr.jp/report/17_02/170215.html#6

2022/07/12

国連障害者権利委員会 脱施設化ガイドライン(案)公開

 20225月末、国連障害者権利委員会は「緊急時を含む脱施設化に関するガイドライン(案)」を公表した。ガイドラインは、障害者権利条約第14条(身体の自由及び安全)の指針と第19条(自立した生活及び地域社会への包容、いわゆる脱施設化条項)の一般的意見5号を補完するものである。6月末まで、パブリックコメントを実施していた。

 この脱施設化ガイドラインには、どんな重い障害があっても自分の好きな地域で自分らしいくらしをどのように構築するかが書かれている。確かに私たちの生活は現在、多くの国々と同様、施設を容認する文化が強まるなかにあって、生活に制限が多い。しかし本ガイドラインが採択されると、暗い夜にキラッと光る星が灯る。健常者社会をも説得し、みんなでこの星に向けて力強く歩き出せば、誰もが享受できる地域での自立した生活が実現できる。

 さあ動き出そう!

 

★パブリックコメント詳細は

https://www.ohchr.org/en/calls-for-input/calls-input/call-submissions-draft-guidelines-deinstitutionalization-including

 

★ガイドライン案

上記ウェブページ「Draft Guidelines on Deinstitutionalization, including in emergencies
English 」を押してダウンロード

 

【脱施設化ガイドライン案の主な内容】(括弧内は原文の段落番号)

※意訳している部分が多いことをご了承ください。

 

■入所施設とは

·        ガイドラインでは入所施設の特徴として、次の要素を挙げ(15)、施設収容を施設名・形態だけではなく要素の有無の問題とする

o   介助が必要にもかかわらず他人と介助者の共有を強いられる、介助者がいない、介助が制限される

o   地域における自立した生活から隔離、分離

o   日々の判断を自由にコントロールできない

o   誰と住むかを決めることが出来ない

o   そのひとの意思、嗜好と関係なく日課が厳格に決まっている

o   特定の管理者のもとでの同じグループおける同じ活動

o   サービス提供における温情主義的な働きかけ

o   生活様式の管理

o   同じ環境に障害者が不均衡にいる

·        あらゆる形態の入所施設は、脱施設化の改革の対象だ。1つまたは1つ以上の入所施設の特徴があれば、それは地域支援と呼べない。(16

 

■施設収容の有害性

·        施設収容は障害者に対する差別的な実践であり、事実上の法的能力の否定につながる(6

·        施設収容は第19条の脱施設化条項に直接否定するものだ(7

 

■入所施設を終わらすために

·        締約国は、施設収容のあらゆる形態を廃止し、入所施設への措置を終わらせ、入所施設への投資を慎むべきである。また施設収容は「障害者の保護形態」、「選択」として考慮すべきでない。第19条で述べられている権利の行使は公衆衛生上の非常事態を含む緊急的な状態でも中断されない(8

·        施設収容を永続化することは正当化されない。締約国は、地域支援・サービスの不足、貧困、要望などを入所施設の維持の理由に使うできない(9

·        脱施設化プロセスは、公営と民営両方で、障害者と施設収容のあらゆる形態、隔離、分離を終わらすために行なわれならない(11

·        締約国は、一人ひとりに施設を退所する機会を与えること、あらゆる拘束を取り消すこと、非自発的な拘束を禁止する即時的な行動をとらなければならない(13

 

■第19条について

·        締約国は、自立した生活及び地域の包容は、条約第19条と一般的意見5号に沿って入所施設の外にある全ての種類の生活資源に言及していると認識すべきである。規模・目的・性格にかかわらず入所施設は条約に準拠するものとしてみなされない。(19

·        自立した生活及び地域の包容は、完全な法的可能性、住宅へのアクセス、彼らの生活を再びコントロールできる支援やサービス機会が必要となる。締約国は、入所施設から退所するための多数の選択肢を用意し、彼らの判断を実現できるための支援を使えるように保障すべきである。(20

·        19条で言及している「住宅サービス」は入所施設の維持を正当化するものとして使われるべきでない。住宅サービスは、障害者の十分な住宅の権利を行使するための、平等で非差別を目的とした地域に基づく支援やサービスを意味する。(32

 

■地域に基づく支援

·        締約国は、遅延することなく、地域の個別支援やインクルーシブで主流化したサービスの幅を拡充することを優先しなければならない。(21

·        自立した生活及び地域の包容の中心的な要素は、全ての障害者が彼らの選択に基づき、日常生活や社会参加を行なう際に必要な支援があることだ。その支援は多様な選択肢を通じて、個別的で個人に向けたものでなければならない。障害者は、地域に基づく支援の提供を選ぶこと・管理すること・終わらすことにおいて法的能力を行使することができる。(22

·        十分な障害者のための住宅や標準的な生活費を提供することは優先事項だ。締約国は施設退所者に対し、家賃補助を通じて安全でアクセシブルな手頃な地域の住宅を保障すべきである。退所者を集合住宅様式、施設の隣、医療支援付きの住宅に集めることは、第19条と矛盾する。住宅は精神医療システムあるいは入所施設が管理するサービスから独立されなければならない。(31

 

■資金と資源の割り当て

·        締約国は、入所施設を建てることや改良するために公金を使うことをやめるべきで、すぐに公金の投資先を条約に合うようにしなければならない。(27

·        入所施設への投資は正当化されず禁止すべきである。その投資は緊急措置として、入所者の退所や自立した生活のための適切な支援の提供に向けなければならない。(28

·        締約国は、十分な公金をインクルーシブな地域支援制度とインクルーシブで主流化したサービスの維持に割り当てるべきである。(30

 

■障害児について

·        施設収容は、障害児の保護の形態として考慮すべきではない。障害児のあらゆる形態の施設収容は分離形態とみなし、彼らに有害であり条約に適合しえない。全ての子どものように障害児は、かぞくと過ごす権利があり、地域でかぞくと一緒に生活し育つ必要がある。(12

·        障害児にとって、脱施設化は家庭生活の権利の保護に直結しなければならない。子どもにとり地域の包容される権利の中心は、家庭で育つことだ。従って子どもにとって、「入所施設」は家庭にもとづかない措置である。大規模・小規模グループホームにおける措置はとくに子どもには危険である。締約国に施設介護制度を維持することを正当化し奨励する国際基準は、条約に一致せず、更新しなければならない。国際基準の調和は、障害児の保護に欠かせない。(42

·        (中略)数百万の障害児が入所施設・施設介護のままである。国際的寄付は、孤児院・施設介護・グループホーム・子ども村を支援するべきではない。障害児はしばしば改革の外に置かれる。改革は、条約にそって家庭生活の権利を確実なものにするためにおこなわれる必要がある。(44

·        実際の障害、あるいは障害があろうという見立て、貧困、民族、その他の社会的所属に基づいて施設に入れられた子どもたちは、施設措置のために障害を発症する可能性が高い。したがって、障害のある子どもとその家庭への支援は、すべての子どもに対する主流の支援に含まれるべきである。子どもや思春期に対するピアサポートは、地域の完全なインクルージョンのために不可欠である。(44

·        短期間の入所措置でも、大きな苦痛とトラウマ、感情的・身体的障害が生じる。子どもたちの施設収容を防ぐことは、優先事項でなければならない。経済的な支援やその他の支援を伴う家庭に基づく措置は、障害児のために創るべきである。(45

·         条約第23条の4は、障害に基づく子どもと親の不当な分離を禁止する。締約国は、障害のある親に対し、子どもを育てるために必要な支援と合理的配慮を提供し、子どもが施設に収容されることを防ぐべきである。(46

·        障害のある子どもは、すべての子どもと同様に、障害に基づく差別なしに、自分に影響を与える事柄について意見を聴かれ、その意見が十分に考慮される権利を有し、このために年齢および障害に応じた支援を受けることができる。障害のある子どもが自分の意志や好みを表明し、自分に影響を与える個人的な選択や政策の決定に関与できるように、支援や調整が図られるべきである。親、親族、介護者は、障害のある子どもが自分の意見を表明することを支援する上で重要な役割を担うことができ、子どもの意見を考慮すべきである。(47

·         子どもは施設での生活を「選択」することはできない。障害のある若者は、第19条に沿って、どこで誰と暮らすかを選択する機会を与えられるべき。一般的意見第5号で自立した生活環境は「あらゆる種類の入所施設の外での生活環境」と定義されていることを考慮しなければならない。(48

·         締約国は、障害のある子どものために、必要に応じて、個人的支援およびピアサポートを含む地域支援サービスを開発し、その利用を確保すべきである。教育制度はインクルーシブであるべきである。締約国は、障害のある子どもを普通学校に入れ、子どもを施設に入れる圧力の増大につながる分離教育を防止し回避すべきである。(49

·         子どもの施設収容を防ぐために、かぞくおよび子どもにとって利用しやすい情報が提供されるべきである。それは、学校、コミュニティセンター、医師のオフィス、親のリソースセンター、宗教団体を通じて、複数の使いやすい形式で提示されるべきである。かぞくが子どもを施設に入れるよう勧められたりするのを防ぐには、障害の人権モデルに関する専門家のトレーニングが重要である。(50